3. 食品製造

安全な食品を届けるために、食品製造で求められる食物アレルギー対策!

現在の日本では、食生活の変化に伴い食物アレルギー保持者が年々増加傾向にあります。
生活するうえで、欠かすことのできない「食」に関わるアレルギーは、
アレルギー保持者はもちろん、食に関わるすべての人が細心の注意が求められます。
ここでは、食品製造に携わるうえで知っておかなければならない食物アレルギーについてご説明します。

1.食物アレルギーとは?

食物アレルギーは、日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会が作成する、食物アレルギー診療ガイドライン2016で以下のように定義されています。

食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義する。

引用:「食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版」
https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap09.html
(最終アクセス2022年5月24日)

食物アレルギーは、特定の食品を食事として口から摂取する以外にも、皮膚への付着等で引き起こされる場合もあります。
原因となる食品は鶏卵や牛乳など様々あり、このアレルギーを引き起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれています。
食物アレルギーではアレルゲンに含まれるたんぱく質が関与しています。
体内にある抗体がたんぱく質を分解して生じたアミノ酸を異物として捉え、結合することでアレルギー反応が起こるのです。

アレルギー症状には個人差がありますが、蕁麻疹や湿疹などの皮膚症状、咳やくしゃみなどの呼吸器症状、嘔吐や下痢等の消化器症状が引き起こされます。
また、アレルギーの症状がひとつの臓器にとどまらず、複数の臓器に強い症状が出ることをアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーショックでは、血圧の低下や意識状態の悪化が出現し、重症化すると死に至ることもあります。
そのため、食品製造を含めたすべての工程においてアレルゲン管理は非常に重要です。

参考著書
村山秀夫「新編 大活字版 百科 家庭の医学」2004年9月27日発行

2.原因となる食品には何があるのか

加工食品・添加物には、重篤な食物アレルギーを引き起こす危険性がある、あるいは症例数の多い食品を食品表示基準において「特定原材料」と定めて、表示を義務付けています。
特定原材料は、えび・かに・小麦・そば・卵・乳製品・落花生の7品目です。
このアレルゲンとなる物質は加熱処理を行うことで弱毒化する場合もありますが、微量でも体が反応してしまう人もいるため、加工食品でも特定原材料は必ず表示する必要があります。

特定原材料以外にも、食物アレルギー症状を引き起こすことが明らかになった食品のうち、症例数や重篤な症状を呈するものの数が相当数見られるが、特定原材料に比べると少ないものを、「特定原材料に準ずるもの」として21品目*1が定められています。
特定原材料に準ずるものを含む加工食品については、該当食品を原材料として含む旨を可能な限り表示するよう努めなければなりません。

食物アレルギーの食品表示についてはこちらをご覧ください。
(ただいま執筆中です。もうしばらくお待ちください)
消費者庁HP「食物アレルギー表示に関する情報」はこちらをご覧ください。

3.安全な食品を製造するためには

食品の製造では、消費者が安心安全な商品選択を行えるようにしなければなりません。
では、具体的にどのようなことに注意して食品製造を行えばよいのでしょうか。

【コンタミネーションの制御】
コンタミネーションとは、食品の製造過程で起こる意図しない「混入」のことです。
アレルゲンを使用していない食品にアレルゲンが混入すると、食物アレルギーを保持している消費者が安心して商品選択をすることができません。

コンタミネーションを防ぐためには、作業工程・作業導線の管理が重要となります。下記では、コンタミネーションの恐れのある管理とその防止策についてご紹介します。

・アレルゲンとなる食材と同じ場所にアレルゲンではない食材を保管している
食材を保管している際に容器や梱包袋などに付着し、製造時の混入につながる恐れがあります。可能な限り、アレルゲンを含む食材と含まない食材の開封場所や保存場所を分けておきましょう。

・洗浄が不十分であった食材や調理器具にアレルゲンが付着している
食材や調理器具の洗浄は、微生物等の衛生面だけではなく、アレルゲンのコンタミネーションを防止するためにも非常に大切になります。調理器具であれば、アレルゲン専用のものを用意しておくこともコンタミネーションの防止策となります。

・同室内でアレルゲンを使用した商品と使用していない商品を同時に製造している
食品製造の場では、同じ空間で複数の商品を製造していることがよく見られます。アレルゲンを使用していない商品を製造している横でアレルゲンとなる食材を使用していると、混入の可能性が高まります。1日の製造スケジュールとして、アレルゲンを含まない商品の製造から行うなど作業工程を見直し、コンタミネーションを防ぎましょう。

特定原材料不使用の商品でも、同じ工場で特定原材料を使用している場合は、コンタミネーションの可能性を否定できません。
このような場合は、注意喚起として”本品製造工場では〇〇を含む製品を生産しています”と記載することで、アレルゲンの誤食による事故を防ぐことができます。

コンタミネーションの注意喚起についてはこちらをご覧ください。
(ただいま執筆中です。もうしばらくお待ちください。)

【従業員に対する食物アレルギーの教育】
食品製造に携わる従業員ひとりひとりが食物アレルギーに対する正しい知識をもつことで、工場内におけるリスクに気づくことができます。
たとえ加工場にアレルゲンとなる食品を持ち込んでいなかったとしても、従業員の皮膚にアレルゲンが付着していると、混入の恐れがあります。
食物アレルギーを知ることで、従業員ひとりひとりが危険意識を持ち、食品の扱い等にも気を配ることができます。

【アレルゲン情報の管理】
どの商品にどういった食材を使用しているのか、情報の管理も必要となります。
生産から販売までの過程で、アレルギーを含めた原材料の情報が正しく管理されていないと、消費者が正しい情報を選択することはできません。
そのため、一括表示において複合原材料の原材料を省略する場合や、加工助剤*2又はキャリーオーバー*3などに該当し添加物の表示を省略する場合であっても、 特定原材料の表示は必要となります。
原料の入荷時から、商品完成後までの過程で使用した材料はもちろん、調味料に使用されているアレルゲン等も一括表示に必要となるためきちんと管理をしましょう。

いかがでしたでしょうか。
食物アレルギーは、知識や配慮があることで事故を防ぐことができます。
食物アレルギーについての知識をしっかりと身に着け、消費者が安心安全な食品選択ができるよう努めましょう。

*1 特定原材料に準ずるものは「アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、 キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、 バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン」の21品目。

*2 食品の加工の際に使用されるが、(1)完成前に除去されるもの、(2)その食品に通常含まれる成分に変えられ、その量を明らかに増加されるものではないもの、(3)食品に含まれる量が少なく、その成分による影響を食品に及ぼさないもの。
厚生労働省「食品添加物の表示について」より転載

*3 原材料の加工の際に使用されるが、次にその原材料を用いて製造される食品には使用されず、その食品中には原材料から持ち越された添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの。
厚生労働省「食品添加物の表示について」より転載

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