1. 食品工場立ち上げ

安全・安心で美味しい缶詰を届けるために。製造後に行わなければいけない6つの検査

消費者に喜んでもらうには、美味しいことはもちろん、安心して食べられる安全な食品でないといけません。そのために欠かせないのが、製造後に行う検査です。この検査は全部で6つあり、「販売する前に行う検査」と「販売した後に行う検査」の2種類に大別することができます。ここでは、それぞれの検査に関する詳細をご紹介します。

販売する前に行う検査

この項目でご紹介するのは、下記4種類の検査です。
①膨張検査(恒温試験)
②内容物性検査
③栄養成分検査
④無菌試験(細菌試験)

検査の流れは、製造日当日に①、製造日当日もしくは翌日に②と③、①の完了後に④を行います。
①は自社で行う検査、②〜④は外部検査機関で行う検査ですので、製造後1ヶ月ほどは検査のために時間がかかると考えておく必要があります。
それでは、各検査の詳細です。

【膨張検査(恒温試験)】
製造後すぐに行います。
この検査では、製造ロットごとに1缶ずつ取り出した製品を、35℃の温度帯を維持する恒温器(インキュベータ)の中に2週間保管し、殺菌不良がないかどうかを確認します。
35℃は、菌の活動が活発になる温度帯です。もしも巻締不良や殺菌不良が起こっていれば、この時点で缶詰に膨らみが見られます。この状態は、缶詰内部で菌が活発に活動しガスを発生させていることを示しており、その製造ロットの商品は販売することはできません。
2週間が経過して缶詰に膨らみが見られなければ、この検査は合格となります。合格した検体は、続いて無菌試験(細菌試験)に提出します。※続きは、無菌試験(細菌試験)のところでご説明します。

【内容物性検査】
外部検査機関で行うため、製造日当日もしくは翌日に検体として3〜5缶発送します。
内容物によっては、50缶ほどの検体提供が必要になります。検査にかかる期間は、2〜3週間ほどですので、製造後なるべく早めに発送しましょう。
この検査では、缶に詰めた内容物が缶の腐食にどれくらい影響を与えるかを確認し、缶の耐用年数が決められます。缶の耐用年数=賞味期限の上限となるので、缶の耐用年数が3年と決まれば、賞味期限も最大で3年まではいけることになります。
ちなみに、缶の腐食は、phが4.6より低い・食塩が3%以上含まれている・酢酸が含まれていることが原因で起こります。それぞれの規定値を超えると缶の腐食の原因となるので、このあたりも頭の片隅に入れながら商品開発をする必要があります。
また、内容物性検査は弊社を通して東洋製罐様に依頼します。レシピを開示いただくことが大前提となりますが、開示不可の場合は要相談となります。ただし、お聞きした内容によっては、商品開発をお断りする可能性があります。費用は、年間10商品まで無料です。ただし、11商品目以降は1商品につき1万円の事務手数料がかかります。あらかじめご了承ください。

【栄養成分検査】
この検査も外部検査機関で行うため、製造日当日もしくは翌日に検体として2缶発送します。
検査にかかる期間は、1週間ほどです。時間はそこまでかかりませんが、製造後なるべく早めに発送しましょう。
栄養成分検査では、栄養成分の量や熱量を調べます。食品表示基準により表示しなければいけないと義務付けられており、販売の際にパッケージへの表示が必要です。言葉だけでは少しイメージしづらいかと思いますので、下の写真を見てください。

栄養成分表示の一例

加工食品などのパッケージ裏面や側面などに表示されているのを見たことはありませんか?
まさにこの表示を作成するために検査を行い、それぞれの項目の量などを測定してもらいます。外部検査機関については、すでにお取引のあるところがあれば、そちらにご依頼ください。
弊社では、株式会社 食品微生物センター様に依頼しております。お取引するところがなければ、ご紹介させていただきます。

【無菌試験(細菌試験)】
この検査も外部検査機関で行います。
他の検査では、製造したものを検体として使用していますが、この検査では膨張試験(恒温試験)を終えたものを検体としますのでご注意ください。
検査の目的は、微生物がすべて死滅しているかどうかの確認です。陰性結果が出れば、晴れて商品として世に出すことができます。外部検査機関については、すでにお取引のあるところがあれば、そちらにご依頼ください。
弊社では、一般社団法人 食品環境検査協会様に依頼しております。お取引するところがなければ、ご紹介させていただきます。

初回製造の際は、この4種類の検査を全て行わなければ販売することができません。
しかし、再製造の際は、「膨張検査(恒温試験)」のみを行えばよいので、製造後2週間の検査を終えれば販売することができます。ただし、再製造をするにしても、製造する工場を変更する場合は、これまで製造していた工場とは環境が変わりますので、「無菌試験(細菌試験)」をもう一度行わなければいけません。また、使用する原料(部位の変更も含む)を変更する場合は、原料そのものが変わりますので、「内容物性検査」「栄養成分検査」「無菌試験(細菌試験)」を行わなければいけません。

販売した後に行う検査

この項目でご紹介するのは、下記2種類の検査です。
⑤賞味期限検査
⑥官能検査

これらの検査は、加速度試験を採用して行います。
加速度試験とは、製品にとって過酷な条件下で保存し、短期間で長期の賞味期限を推測する手法です。
食品にとって過酷な条件とは、夏場の高温です。高温により菌の活動も活発になるため、食品が腐りやすい時期でもあります。その環境を作り出せる恒温器はまさにこの試験にうってつけです。つまり、製造した缶詰を菌の活動が活発になる35℃の温度帯を維持できる恒温器内で保管し、製造から5ヶ月後、10ヶ月後、15ヶ月後にそれぞれの検査を行います。
加速度試験という名の通り、恒温器内は3倍の時間が経過すると仮定されます。よって、缶詰の中身は15ヶ月後、30ヶ月後、45ヶ月後の見た目や味、食感に近しい状態となります。
サンプルとして恒温器に入れる個数は、各ロットから1缶ずつ(2ロットしか製造していない場合は、一方から1缶、もう一方から2缶)の計3缶です。
上記でご紹介した加速度試験は、オーソドックスな流れです。この通りでないとダメだというわけではありません。
また、加速度試験はあくまでもテストという位置付けです。
この試験と並行して現物を常温保管しておき、実際に賞味期限がきた商品についても官能検査を行ってください。加速度試験の結果だけで判断するのではなく、実際の商品でも判断することを徹底しましょう。

前置きが長くなりましたが、加速度試験という手法を用いた賞味期限検査と官能検査の詳細を見ていきましょう。

【賞味期限検査】
賞味期限の設定は、弊社の知見に基づいて判断できれば2年もしくは3年で設定をしますが、
判断ができなければまずは1年以内(期間はレシピにより判断)で設定し、官能検査を行って賞味期限を延長していく方法をとります。
例えば、賞味期限を2年で設定した商品があるとします。
恒温器に15ヶ月入れておけば45ヶ月経った商品に近しい状態となります。この段階で試食して商品としての基準をクリアしていればそのまま継続販売しても問題ありません。加えて、45ヶ月=3年9ヶ月経っているので、この時点で賞味期限を3年に延長します。
また、製造段階で3年の賞味期限を設定した場合、缶の耐用年数3年を越えての賞味期限の延長はできません。ですから、賞味期限の確認をするのではなく、見た目や味、食感の変化を確認します。
ただし、賞味期限内でも予期せぬ内容物の変化があるかもしれません。そのため、5ヶ月、10ヶ月、15ヶ月のタイミングで官能検査を行います。商品としての基準がクリアされていなければ、賞味期限内であっても回収する必要が出てくる可能性があります。

【官能検査】
見た目、香り、味、食感が商品としての基準をクリアしているかどうかを確認します。
賞味期限検査でも触れましたが、仮に賞味期限内であっても商品としての基準を下回っている可能性もあります。その場合は、商品を回収するとともに、美味しさを少しでも長く保てるように商品の改良を重ねていきましょう。

最後に、異物混入や味わい、見た目について消費者からの問い合わせがある可能性も考えられます。
そのために、賞味期限検査や官能検査を行う3缶以外に各ロットから1缶ずつ(2ロットしか製造していない場合は、一方から1缶、もう一方から2缶)の計3缶を余分に保管しておくと良いです。
こちらは、恒温器に入れておかなくても大丈夫です。

缶詰製造に関わる検査は、製造後すぐに始まり、販売した後も継続して行っていきます。販売前に行う検査は商品の安全性に関わるところ、販売後に行う検査は消費者にとっての安心感と美味しさに関わるところと考えるとイメージしやすいのではないかと思います。
消費者に喜んでもらうために、そして商品を販売する側も安心・安全だと根拠をもって販売するために、きちんと検査を行える管理体制を構築していきましょう。
なお、文中に出てくる恒温器は下記にてご紹介しております。こちらもあわせてご覧ください。

工場導入にご興味がおありの方は、こちらよりお問い合わせください。

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