HACCP

既に義務化!食品工場を開始するならHACCP(ハサップ)対応が必須

2018年6月の食品衛生法の改正により、2020年6月1日よりHACCP導入の義務化がはじまりました。1年間の猶予期間を経て2021年6月1日から完全義務化となりました。

「HACCP?そもそも何なの?」
「どのように、どこまで対応したら良いかわからない!」
と新規で工場を始める方はHACCP対応が必須と言われても、具体的にどうすれば良いのかお困りだと思います。

今回はHACCPの概要をお伝えし、導入方法に関する情報をお伝えします。

HACCP(ハサップ)とは?

厚生労働省は「HACCP」について次のように説明しています。

HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把  握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。
この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され,各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。

引用:厚生労働省HP_食品_各施策情報_HACCCP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html
(最終アクセス2022年4月12日)

「HACCP」の起源は、1960年代に開始されたアメリカのアポロ計画の中で宇宙食の安全性を確保する目的のために開発された衛生管理手法の概念です。

その後、食品規格(コーデックス)委員会から「HACCPシステム適用のガイドライン」として食品の衛生管理手法が発表され、今に至ります。

現在では、HACCPシステムによる衛生管理はアメリカをはじめ、カナダ、EU諸国、オセアニア、東南アジア諸国にも普及し、国際的に通用する食品衛生管理方法の基準となるグローバル・スタンダードとして、HACCPシステムが食品全体の衛生管理の国際標準としての地位を築いています。

HACCP(ハサップ)システムによる衛生管理とは?

引用:特定技能相談室_飲食料製造業_HACCP
https://fukuoka-visa-assist.com/tokuteiginou/haccp%e3%80%80-%e3%80%80%e3%83%8f%e3%82%b5%e3%83%83%e3%83%97%e3%80%80/
(最終アクセス2022年4月13日)

「HACCP」の意味ですが、「Hazard(危害), Analysis(分析), Critical(重要), Control(管理), Point(点)」の頭文字をとってできた造語です。

引用:今城 敏(2020年)『フレームワーク思考で学ぶHACCP』

食品安全を脅かす危険要因(ハザード)は、提供する製品、提供方法、工場に受け入れる原材料、調理・加工の方法によりさまざまです。
これらが想定できずにミスしてしまう事を防止しないといけないので、
①各工程ごと1つずつどんな危険要因(ハザード)があるのか分析する
②分析した結果、危険要因(ハザード)が何かわかったら、予防管理する方法を考る
③予防管理方法が確立したら、自分以外の誰かにも分かるように計画書を書き、日々実施する
④実施していることを自分以外の誰かに証明できるように記録に残し、さらに責任者がチェックする
といったことをあらかじめ決めておく必要があります。

HACCPで重要とされている基本的な考え方は「予防」と「自分以外の誰か」に伝えられることです。

HACCP(ハサップ)導入の対象となる事業者は?

対象は「食品の製造・加工、調理、販売、飲食店などの食品を扱うすべての事業者」です。大規模な食品工場や、スーパーマーケット、個人経営の飲食店もHACCPを導入しなければなりません。
また、学校や病院等の営業ではない集団給食施設も、HACCP に沿った衛生管理を実施しなければなりません(ただし、1回の提供食数が20食程度未満の施設は対象外)。

改正食品衛生法では、事業規模ごとの基準を設けています。
●一般事業者…従業員数が50名以上の企業
→ HACCPに基づく衛生管理

●小規模事業者…従業員数が50名未満で、一般衛生管理の対応範囲内の業種
→ HACCPの考え方に基づく衛生管理

ただし、小規模事業者向けの「HACCPの考え方に基づく衛生管理」では、スーパー、百貨店の商品取り扱い基準に満たない場合があり販路の機会損失になるケースもあります。
また海外への輸出を考えるなら一般事業者と同じ管理基準にあわせる必要があります。

HACCP(ハサップ)と従来衛生管理との違いとは?

引用:今城 敏(2020年)『フレームワーク思考で学ぶHACCP』

上の図からも見てとれるように、従来の衛生管理では全ての製品を検査できず、不合格時、全ての製品を廃棄せざるを得ませんでした。
一方、HACCPによる衛生管理では全ての製品を管理できるので、問題ある製品の出荷を効果的に未然に防止することができるようになります。

HACCP(ハサップ)の7原則12手順について

引用:AMANO_お役立ち情報_HACCP(ハサップ)とは
https://www.amano.co.jp/column/detail/202008_2.html
(最終アクセス2022年4月13日)

HACCPでは食品製造の工程を管理するためのガイドライン、「7原則12手順」が設定されています。
これは危害要因の分析、管理手法の設定・運営についての作業手順を規定したものです。

ガイドラインには12の手順があり、食品衛生のレベルを維持するために、これらの手順に沿って製造を行います。

12の手順のうち、「1」から「5」までの5つが危害要因分析のための「準備」で、「6」から「12」までの7つがプラン作成の「原則」に分かれています。

12手順に沿って危害分析を行い、食品そのものの衛生管理上必須の重要管理点(CCP)を決定して、重要管理点(CCP)を管理するための7原則を含むHACCPプランを作成し、それにより日常の衛生管理を行います。
※重要管理点(CCP):それ以降の工程で何をしても危害要因を管理出来ない工程(ポイント)のこと

手順1から5は事業所の経営陣や現場の責任者が、手順6から12の7原則の取組みは、現場で製造や加工に携わる皆さんが構築する必要があります。

つまり、HACCPは全員で取り組む必要があります。
HACCPシステムの衛生管理の効果を最大限にするためには、製造・加工に関わる全従業員が一つになってHACCPの運営に関わる必要があり、取り決めた内容をよく理解し、確実に実施することが重要です。

HACCP(ハサップ)導入のメリット・デメリット

【メリット】
社員の衛生管理に対する意識の向上
衛生管理計画書を作成することで、無意識に機械的に、時には手を抜きがちだった衛生管理に 再度向き合い、食品衛生に対する意識を向上することができます。

社外に対して自社の衛生管理について根拠を持ってアピール出来るようになる
日々記録管理しているので、社外からの衛生事項のヒアリングにも自信を持って回答できるようになります。
また、例えばHACCPを導入している食品製造会社であれば、自社製品に使っている原材料の仕入先もHACCPを導入している会社にしたいと考えるはずです。新たな顧客を獲得する可能性もあります。

製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになる
日々の記録管理から製造機器等の不具合にすぐに気づく事が可能となり、被害が拡大する前に未然に防ぐ事ができます。

クレーム・ロス率が下がる
作業工程を見直す過程で、事故の原因となりそうな箇所の対策ができます。そうする事により、食品事故を防ぐ事ができ、結果クレームやロス率を下げる事ができます。

【デメリット】
場合によっては費用がかかる
今後新規で工場を立ち上げる場合は、最初からHACCPに対応できるように設計や設備を整えると思いますので、初期投資以上に特に費用をかけることなくHACCPの導入が可能ですが、元学校の給食室や民間施設(元工場等)をリフォームして工場に再利用する場合は追加で必要な設備を揃える費用が発生するかもしれません。

労力と時間がかかる
衛生計画書の作成、日々の衛生管理と記録など、労力と時間がかかります。
また、そのHACCPを中心となって推進するリーダーの育成やHACCPを導入して決めたルールを全従業員が維持していくため定期的な教育訓練が必要となります。

HACCPを導入しても完全に食品事故を防げるわけではない
HACCPを導入しても100%食中毒を防ぐ、というわけではありません。食中毒の可能性を限りなく低くするためのシステムなので、地道に実施して、結果として食中毒が起こらなかった、というものになります。

HACCP(ハサップ)導入ステップの参考サイトのご紹介

ざっと概要をお伝えしました。

「なんとなくHACCP導入は必要と理解できたものの、実際HACCP導入はどのように進めていけばよいのか?」
と思われたかもしれません。

HACCP導入に関しての情報はさまざまあり、どれを参考にしたらよいか迷いますね。

参考までに、HACCP導入ステップのモデル例を下記に記載します。

一般社団法人 食品産業センターのホームページの学習ツールで学ぶ
こちらのサイトにはHACCPに関する資料が充実しています。
その中の【学習ツール】の動画は一流講師の方々が監修していますので、わかりやすくHACCPの全体像を把握するのにピッタリです。

・学習ツール
https://haccp.shokusan.or.jp/learning/summary/

厚生労働省のホームページのHACCPモデル例を見てみる
厚生労働省のホームページには9種類のHACCPモデル例が掲載されています。
該当のモデル例を参考に一度HACCP導入にあたっての手順(原則)に従って作成してみてください。

・HACCPモデル例
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126913.html
上記のリンク先で該当するものが無い場合は下記のリンク先のものも参考にしてみてください。

・食品等事業者団体が作成した業種別手引書
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00001.html

工場のある管轄の保健所に相談してみる
モデル例等で作成した資料は、一度工場のある管轄の保健所に添削してもらえるか相談してみてください。必ずではないですが、相談に乗っていただけます。自治体によっては保健所がHACCP講習会を開催している場合もあります。
工場をスタートする時からお世話になる所です。
日頃より密にコンタクトをとり、相談しやすい状況を作っておく事も重要です。

上記のモデル例を順に進めていくことでHACCPの導入方法はある程度ご理解いただけると思いますが、それでもやはり不安だと言うのであれば④の方法があります。

民間企業や団体などの講習会に参加して資格を取得する
最終的にはHACCPを中心となって推進してくれる人を育成しないといけないので、民間会社等の資格を経営陣・責任者候補の何名かは講習会に参加して資格を保有をされるのが良いと思います。
消費者は「食の安全」のどの点に魅力を感じるのかというと、決して、パッケージにHACCP認証マークがついているから、その会社がHACCP認証を持っているからではないと思います。
HACCPを正しく理解していて、実行し続けている「人」が多くいる会社に魅力を感じるのだ思います。
投資するなら是非「人」に投資することをお勧めします。

私たちが参加したいくつかの講習会の中で現場目線で教えていただけるなと思ったのが下記の研修です。

【ロイドレジスタージャパン HACCP責任者研修(3日間)
https://lloyds-register.co.jp/food-safety-05/

多くの事例や演習を用いた、具体的かつ実践的な講習スタイルが特徴です。

この研修を担当される講師の先生は、現場経験が豊富です。手引書のようなHACCPの理想形をそのまま導入するというのは、難しい場合もあろうかと思いますが、各工場の実情を考慮してご指導いただけます。
是非ご自身の現場で起こりそうな困り事を質問してみてください。

また、オプションでHACCP書類の作成の添削、加工現場の現地視察・改善提案もしていただくことも可能です。

以上がモデル例です。

いかがでしたか。

HACCP導入にはメリットがあり、衛生管理レベルの向上、作業効率や従業員教育など今までのやり方を見直すきっかけにもなり、また、新たな顧客創出に繋がる可能性のある重要な役割を担っていますね。

もちろん、導入には多くの労力や時間がかかり、それでいて全ての食品事故をなくせるわけではありません。

しかし、日々管理・記録・改善を実践していくことで、工場全体で衛生管理の意識が高まっていき、結果として食品事故を限りなくゼロすることができるのです。

今回の記事を参考に、HACCP導入を始めてみてください。

※食品工場の立ち上げにご興味のある方は、こちらもあわせてご覧ください。

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