3. 食品製造

試食の評価ポイントは「味・見た目・香り」

多くの消費者から良い商品と思ってもらえるよう、試作と試食を繰り返します。
試食での評価は、「美味しい」という判断だけではありません。
ここでは、試食での目的やどのようなポイントを評価しているかご紹介します。

試食の目的は?

試食の目的は、次回試作の方向性を決めることです。
商品の販売者、レシピの開発者などさまざまな部門を交えて試食を行います。
この中で意見を出し合い、次回試作への改良点として取り上げ、より多くの消費者に美味しいと思っていただけるかたちに近づけていきます。
また、缶詰は巻き締めた後に高温でレトルト殺菌を行うため、完成後の味や食感、見た目は大きく変わります。
試作中にはわからない、レトルト殺菌後の変化を確認することも重要です。

試食のポイント:味

美味しさを感じる要因として1番に思い浮かぶのは味だと思います。
味は、食べる人や場面によって感じ方が変わるため、ターゲットの好みに近づけることが大事です。
また、缶詰は缶の特性上、塩分濃度の高いものや酸度の低いものを詰めることができません。
高温でレトルト殺菌を行うことや、缶の特性を踏まえた上で、理想の味に近づけていきます。
では、弊社が行っている味の評価方法とその改良方法についてご紹介します。

【塩味】
スープやカレーなどでは、消費者が食べる状況を想定し、温めて味の濃淡を判断します。
塩味は、温度が低くなるにつれて味を感じやすくなる性質があるため、塩分濃度が高くならないようにします。
また、塩分濃度が高いと缶が腐食してしまうため、全体の塩分量を3%以内に抑えなければなりません。
味が物足りなく感じる場合は香辛料でパンチを出すなど、塩味を減らす工夫をしましょう。

【甘味】
塩味とは対照的に、口に入れる温度が高くなるにつれて味を感じやすくなります。
甘味は、濃度の強いものでも缶に詰めることが可能です。
また、砂糖などには保水性があるため、食品のパサつきを抑えるための使用もできます。

【酸味】
酸味は、時間が経つことでさらに強くなることがあります。
肉や魚など、たんぱく質の多い食品では酸の変性により身が引き締まることもあります。
また、酸味は缶が腐食しないように、pH4.6より大きくしなければなりません。
ものによりばらつきがあると思いますので、なるべくpH5に近づけておくのが理想です。

【苦味】
缶詰では、醤油や味噌などを使用した際に苦味を感じることがあります。
これはメイラード反応と呼ばれ、酸素・酵素が関与しています。
これらが原因となり、苦味や色の濃さが出てしまうため、調味料の調整が必要となります。

【旨味】
日本には出汁の文化があり、その内容は旨味です。味に奥深さやコクを出す際に使用します。
旨味成分はかつおや昆布、椎茸などのきのこ類に多く含まれています。缶の腐食に影響を及ぼすことはありませんが、動物性のアミノ酸は劣化が早いため、賞味期限が短くなる可能性があります。

【辛味】
唐辛子などに含まれる辛味成分は、徐々に食品に染み出ます。
辛み成分が染みだす間は、時間が経つほど辛味が増すので、辛味が増すことを考慮して食材の使用や量の調整をしなければなりません。

試食では味の評価のみならず、食品への味の馴染み方や食材の硬さも確認します。
缶詰は、殺菌後すぐでは味が十分に馴染んでいないので、私たちは試作日から10日〜14日ほど日を空けて試食評価を行います。
油分の多い食材や形の大きな食材は、調味料が馴染みにくいです。
調味料の粘度等も味の馴染み方に影響を与えるため、食材の特性に合った改良方法を試してみましょう。
また、レトルト殺菌の前後では、食材の硬さの変化が顕著にあらわれます。
肉の軟骨や魚の小骨などは高温のレトルト殺菌により、柔らかく仕上げることができます。
F値や温度を変更したもので比較し、より適した製造方法を探します。
F値については、下記ページをご覧ください。
(ただいま執筆中です。もうしばらくお待ちください)

試食のポイント:見た目

ものを美味しいと感じる要因の一つに、見た目が関与しています。
そのため、色合いや配置、内容量は見た目の評価ポイントとして重要です。

缶詰のレトルト殺菌は高温ですので、食材の色の変化を確認します。
レトルト殺菌を行う前はきれいな色合いでも、高温の熱を加えることによって食材が変色してしまう例は少なくありません。
また、醤油や味噌のような色の濃い調味料を使用している場合は、調味料の影響を受けた色に仕上がります。
調味料は、薄口醤油や白だしを使用するなど、出来上がり後の色への影響を考慮し改良しましょう。
見た目が単調な場合は、味のバランスを考慮する必要はありますが、アクセントとして加熱による色の変化が少ない、赤パプリカ、赤唐辛子(鷹の爪)などを加える事を検討してもいいかもしれませんね。

食材のカット方法による見た目も評価します。
食材を大きめにカットすると、存在感があり見た目の満足度も高いです。
反対に、食材を小さめにカットすると見た目や味に統一感が出ます。
食材とカット方法の組み合わせは多種多様ですので、素材の特徴や味を活かしたカット方法を選択しましょう。
弊社では、レトルト殺菌前と試食前の内容物の写真は残すようにしています。
高温を加えることによる見た目の変化はもちろん、試作ごとの比較もできますのでぜひ試してみてください。

試食のポイント:香り

食物の香りも、美味しさの印象を左右する重要な要素です。
缶詰は、蓋を締めた後に熱を加えるため、缶内部に香りが充満します。
美味しそうな香りであれば問題ありませんが、肉や魚の臭み等、美味しさに結びつかないものであれば改良しなければなりません。
改良方法は普段の料理と同じで、事前の加熱や臭み消し(マスキング)の使用を検討します。
肉や魚をご家庭で調理するとき、下茹で(ブランチング)等で臭いを消す方法を使用すると思います。
缶詰にする食材も、事前にブランチングを行うことで臭みを軽減させることができます。
また、+αの香り付けやマスキングによく使用するのがスパイスやハーブなどの香辛料です。
味への影響も考慮しながら使用していきましょう。

いかがでしたでしょうか。私たちは普段、上記のような内容をもとに商品の試食評価を行っています。
もちろん、内容物が変わるごとに試食評価や改良方法も変わります。
さまざまなパターンの試作、試食を重ねてターゲットに合わせた商品に近づけていきましょう。

カテゴリー

最近の記事 おすすめ記事

記事一覧を表示するには、カスタム投稿「ブログ」にて、4つ以上記事を作成してください。

記事一覧を表示するには、カスタム投稿「ブログ」にて、4つ以上記事を作成してください。

TOP